夢の設定
今日から九月。お昼の街では子供の声は聞こえなくなり、風が吹くと季節の変わり目の匂いがした。
私は先日自分の夢を決めた。
夢って何なのだろうか。
いまだはっきりとはわからないが、小さい頃はたくさん夢を持っていたことは自信を持って言える。
幼いころ、私はなんにでもなれると思っていた。獣医さん、首相、ピアニスト、バレリーナ、画家、バレエ教室の先生、、、
いつからだろうか、夢を持たなくなったのは。
とはいえどんな仕事に就こうかはずっと考えていた。
公務員、出版社、エンタメ業界、、、
しかしこれらは夢であっただろうか。自分の可能性を狭めに狭めた中で選んでいるに過ぎないのではないか。正直私はこれらの仕事をしたいのかどうかわからなかった。
そもそも私は仕事が好きではないし、競争も苦手だ。やらなくていいならやりたくない。
それにこれらはやろうと思えば比較的簡単にできることだ。
これらは夢とは言えないだろう。本当に夢を持っている人に申し訳ない。
私は先月、ある舞台を観た。「モマの火星探検記」という宇宙に行くという大きな夢を持った親子の話だ。
夢に向かって頑張ることの尊さよ。
それを観てから、私にも夢があるはずだとずっと考えていた。
苦労を避けようとする自分が嫌になる。でも苦労してまでやりたいと思えることはなかなかない。
それでも、最近私には一つなりたい職業がある。
翻訳家。
そしていつかはミュージカルの翻訳をしたい。
これが、本当の夢かはわからない。
「モマの火星探検記」で描かれている夢と比べれば低俗な夢だろう。
これのためにどこまで努力できるかわからない。
私がこれに本当になりたいのかもわからない。限られた可能性の中で選び取ったものに過ぎないのかもしれない。
それでも、実現するかわからないような夢を設定し、それに向かって頑張ろうとすることは、自分の人生を豊かにしてくれる気がする。
自分の人生に、一筋の光が差した気がするのである。
「翻訳家になる」という夢は、子どものころのような純粋な夢とは異なるかもしれない。でも私はこの夢を、夢だと言わせていただきたい。
そしてこれのために頑張ることをここに誓いたい。